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家出少女らしい。親が心配してるんじゃないか?などとありきたりな言葉しか出ず、それに対して彼女は虐待を臭わすようなことを言ったのでとりあえず一日だけ泊めるということにした。表向きは。今のところ無害だとは思われているはずだ。

今俺はテレビを見ている。芸のないキャラクター先行のタレントが、何かやっているけどそんなのは頭に入ってこない。家に上がった後何を喋っていいのか分からず、とりあえずテレビを付けただけだ。

彼女はというと一人暮らしの部屋が珍しいのか色々探索している。友達に同じ事をされると常識がないなと憤りを感じるが、無邪気な少女なら許せる。ただの少女でははく「美」が付く少女だからってのもあるかもしれない。

「なんで俺なの?いや、その泊めてくれる人なら他にもいるかもしれないし。」
何を話そうか手探りで、とりあえず思っていた疑問を投げかけた。

「ご迷惑でしたか?」
「いやいやそんな事は全然ないよ!単純になんでかなーと思って」
彼女は心底申し訳ないという顔をし、そう思わせてしまったことに対し少し胸が痛む。

「本屋さんで見かけた時にその、スーパーの袋を持っていらっしゃっていて、
その量と中身から一人暮らしかと思ったのです。やはりご家族がいる方の所には泊めてはいただけないでしょうから。でも確信がなかったので失礼かとは思いますがお家まで付いて行きました。大きさで一人暮らしかはほぼ分かりますから。」

名探偵コナンか。俺は思った。そんな大した推理じゃないのだろうけど、子供にしては頭が切れる。身なりは整っていて高そうな服を着ているし案外金持ちのお嬢様でしっかりした教育を受けてきたのかもしれない。虐待とかは嘘で厳しすぎる両親が嫌になり家出とかもありえそうだ。

「そうなんだ」とだけ答え、それからはテレビからの雑音だけが室内に流れる。女性と話すのは別に苦手じゃないし、女友達もいる。しかし、自分の半分程度の人生しか生きてないであろう少女となんの話をすればいいのだろうか。恥ずかしながら付き合った経験とかもないので、タイプの女性が自分の部屋にいて固まってしまっているというのもある。あとヤバい事をしているという緊張も。

手持ち無沙汰なので今の状況を2ちゃんねるのVIPという、よく行くサイトに書き込もうと思いPCを立ち上げる。が、それはやめた。通報されかねない。

「なんか飲む?」
代わりに気まずい沈黙を破ろうと飲み物を勧めてみた。
とはいってもジュースなんてなかったのだが。

「いいんですか?じゃあ頂きます」
彼女も手持ち無沙汰だったのか弄っていた携帯の手を止めて答える。

「あ、ごめんお茶とコーヒー、牛乳しかないや。それか酎ハイでも飲む?」
冗談っぽく言ったつもりだったけど、興味を示して飲んだらいいのにという腹積もりもあった。小学生に酒を勧めて強制猥褻。そんな記事が近いうちに載るかもしれない。

「ではコーヒーをもらえますか?」
少女は天使のような微笑み俺に向ける。俺の表面上の冗談に笑ってくれたのかどうかは分からないがなんだかホッとした。

ホットもアイスも両方あったけど彼女はホットコーヒーがご希望で、インスタントコーヒーの入ったカップにお湯を注ぐ。口調だけでなく全てが大人びているのか砂糖もミルクもいらないらしい。俺は自分の緊張を和らげ、気持ちに勢いを付けようと缶酎ハイを飲むことにした。

「よくそんな苦いの飲めるね」
今日飲んだ缶コーヒーの事を思い出して言った。

「私、アイスコーヒーはミルクも砂糖も入れるんですけど、ホットの時はブラックが好きなんですよ」
「へー!すごいね。俺は今日缶コーヒー買って久しぶりにブラック飲んだけどやっぱりダメだった」
「うふふ可愛いんですね」
「君みたいな可愛い娘に『かわいい』って言われるなんて。嬉しいなぁ」

酒に弱い俺はすぐに酔って意図したとおりにスムーズに会話ができていた。その後も学校やテレビの話題など取り留めのない会話を続けた。30分程話し込んだ頃にオナカが減っていたのを思い出した。

「そういえばオナカ減ってない?ハンバーグ作るけど食べる?」
ひき肉などの材料は2人が食べるのに事足りるだけの量はある。

「あ、僕はいいです。そんなにオナカ減ってないんで」
遠慮がちに彼女は言う。子供らしからぬ性格なので本当に遠慮しているのかもしれない。それよりも引っかかったことがあった。

「遠慮しなくていいよ。てか今僕って言ったよね?」
俺にとってはかなり重要なことなので追求してみることにした。

「え?あ、そうでしたっけ?」
彼女は狼狽し明らかに誤魔化そうとしている。そう感じた。

「自分のことを間違って『僕』なんて言わないでしょ?別に恥ずかしいことじゃないから、本当はいつも言ってるんじゃないの?」
しつこいとは自分でも思うがどうしても追求したかった。俺には確信があった。

「うー・・・えー・・・はー、たまに使います」
やはりそうだ。完全に認めてはいないが、間違いない。この少女はただの少女とは違う。美少女であり、お嬢様であり、さらに

「ぼくっ娘」なのである。

「ぼくっ娘」とはその名の通り、一人称として「ぼく」を使う女性のことである。ちなみに一人称が「俺」な女性の事を「俺女」と呼んだりする。特に漫画やアニメ・ゲームなんかに登場することが多いのだが稀に現実世界にもいるのだ。ブログなんかだと芸能人や声優なんかでもたまに見かけることができる。

何故ここまで執拗に「ぼくっ娘」かどうかに拘るのかというと、それは俺が「ぼくっ娘」萌えだからである。「ぼくっ娘」がたまらなく好きなのだ。最近までそうでもなかったがローゼンメイデンという作品のあるキャラクターのせいで虜になってしまった。

「もしかしてアニメとか好き?」
「ぼくっ娘」や「俺女」はオタク系メディアに多用されるので、その影響で現実でも使っているのはアニメ好きとかのオタク女性に多い。小学生くらいならアニメを見ていてもオタクではないだろうが、アニメ好きなら共通の趣味ができてちょっと嬉しい。

「いえ、特には。エヴァンゲリオンとかなら観たことありますけど」
そう言いながら彼女はPCの横にぽつんと置いてある、エヴァ初号機のフィギュアに目をやる。
「あー、今やってる映画の奴?」
「え?エヴァンゲリオンって映画でもやっているんですか?」
どうやら彼女が「アニメ好き」という俺の読みは違ったようだ。

「エヴァの劇場版は今回だけじゃないし、今やってるのは新劇場版で・・・」
云々と語りたくなったけど辞めた。確実にひかれてしまう。

これ以上話を広げるのはまずいと話をきりあげ二人分の夕食を作ることにした。

「とっても美味しかったです!こんなに美味しいハンバーグ初めて食べました!でも夕食までご馳走になって本当にすいません」
結局彼女は俺の作った特製和風ハンバーグをペロリとたいらげた。先程遠慮はしていたが、俺より早く食べ終えるくらいだからよっぽどオナカが減っていたのかもしれない。俺も食べるのが早いわけではないが。

「いいって。美味しいって言ってもらえるだけで嬉しいし」
照れながら本心を言った。なんでこんな程度で照れてんだよと自問するが、やっぱり恋心を抱いてしまってるんだろうか。

少し遅れて俺も食べ終わり、食事の後片付けに入る。洗い物をさせて欲しいという彼女の申し出は断った。夜ももう遅いので代わりに風呂に入ることをすすめた。

またも遠慮していたのだが、子供がそんなに遠慮するもんじゃないとやり込め半分無理やり風呂に入らせることにした。

ここからが正念場ってやつだ。自分に言い聞かせるように心の中で呟いた。
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