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その日は5限目まで授業があって学校を出る頃にはすでに日は暮れていた。ところで経済学部なのに一般教養だかなんだかで、これから一生役に立ちそうもない哲学とか勉強させられるのはなんなのだろう。最後の講義がその哲学でいつも舟をこいでしまう。眠気覚ましにブラックの缶コーヒーを買ってみたけど、苦くて美味しいとは思わなかった。せめて微糖とかにすればよかった。

そんな愚痴を頭の中で吐きながら、スーパーで今夜の夕食の材料を買い込み、そしていつも通り本屋に向かった。本屋に寄ってからスーパーに行った方が荷物もなくていいのだろうが駅、スーパー、本屋、自宅という並びだからしょうがない。

本屋に何を買うという目的はないけれど、かなりの種類のコミックを集めているので新刊が出ていないか毎日のようにチェックしてしまう。また、この店はかなり大きめの書店でコミックの取扱いも豊富。立ち読みが出来るのも良く行く理由の一つであったりする。

目ぼしい新刊コミックもなかったので、適当なエロマンガを立ち読みすることにした。普通のコミックが4~500円なのに対し、成人向けアダルトコミックというのはだいたい1000円はする。貧乏学生がむやみやたらと買うことはできないので、「コレだ!」と惹かれるものがない限り立ち読みで済ましている。

そんな選別作業も兼ねた充実した一時を楽しんでいると、横から視線を感じた。読んでもらう為に包装もせずに置いてあるのだから、立ち読みして何が悪いという固い意志と、性欲は誰にでもあるもので恥ずかしいことではない、という熱いポリシーを俺は持っているので構わず読み続けた。

しかし、何が珍しいのかじぃーっと見続ける視線。その視線の元をふと辿るとまだ幼い少女がいた。しかも目があった瞬間こっちに近づいてくるではないか。小学生とかモロにストライクゾーンなのだがそれは二次元の話で・・・いや本当は三次元もあり。

そんなことよりさすがに強者の俺もあどけない少女にこんな姿を見られていると、恥ずかしいのと悪いことをしているような気持ちになる。何だかいたたまれなくなりさっとポリシーは投げ捨てて成人コミックコーナーから離れた。

焦っていたのか読んでいた本を手に持ってきてしまい、少女がまだいるかもしれない先程の場所に戻るのもなんだかなーと思って、そんなに欲しくもないコミックの会計を済まし店を出た。もう少し立ち読みしたかったけど、そろそろオナカも減ってきたところだった。早く家に帰って飯でも作ろう。自炊は面倒くさいが嫌いじゃない。

「今日のおかずはハンバーグ!やったねパパ!明日はホームランだっ!」と、昔なにかの漫画で読んだ気がする元ネタもわからないフレーズを脳内で再生しつつ家路に着く。ワンルームマンション、と言えば聞こえはいいが玄関にオートロックとかもない安いアパートだ。住んでいるのは一階で湿気が多いのと窃盗被害に合いやすいので敬遠されがちらしいが、俺は面倒な階段やエレベーターを使わなくてすむので気に入っている。

自宅の前で鍵を出そうとしていると携帯にメールが届いた。誰からだろ?と考えていたらただの迷惑メールだった。「なんだ」と思わず声に出すとちょうどその時、後ろで動く気配がした。俺の家はマンション一階の一番奥なのでここまでは自分以外誰も通らないはず。おいおいストーカーとかやめてくれよ。痴女ならともかく刃物を持った男とかだったらどうしよう。と一瞬で妄想しながらもゆっくり振り返った。

するとそこにいたのは本屋で俺のことをじっと見ていたあの少女だった。

「え!何?」
条件反射のように小さく叫んだ。少女は何故俺の前にいるのだろうか。書店では気にも留めなかったが物凄く整った顔立ちだったりする。

「あの本当にご迷惑だとは思うのですが、今日一日でいいですので私を泊めていただけないでしょうか?お願いします」
見た目の幼さとは裏腹に大人びた口調で切願した。

そこからはあまり覚えていない。最初は断っていたはずだ。少女と会話しながらも頭の中では「これはチャンスだ」という悪魔の声と「未成年者略取で捕まるよ」という天使の声が聞こえ葛藤していた。「ばれなければ大丈夫」、「悪いことをすると神様が見ててばれる」という声が聞こえた時に、今日の哲学の講義で唯一記憶に残っている言葉が稲妻の様に走った。

「神は死んだ」

気付けば彼女を家に上げていた。
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